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やる気スイッチの常識

現時点では、その予測はほとんど不可能である。 技術移転でエネルギー消費を抑えられるか経済発展とエネルギー消費は強い関連をもっている。
わが国の過去一00年程度のエネルギー消費を、実質GDPで回帰分析を行ってみると、その弾力性(伸び率と伸び率の比、通時的弾力性)はほとんど一・0である。 また適当な近時点で世界各国のGDPとエネルギー消費のクロスセクシヨンの弾力性(共時的弾力性)を計測してみてもほぼ一・0である。
このことはエネルギーが経済発展と強く結びついた資源であり、産業や家計にとって不可欠なものであることを示している。 しかし一方、石油危機以後、わが国だけでなく多くの国のエネルギー消費の増加率はそれ以前と比較するとかなり低下している。
これは、一0―二0年程度の比較的短期間においては一時的に弾力性が低下したにすぎない仮需要の対GDP弾力性は大きく変化しうるので、仮設Aとみることもできるし、エネルギー危機を境にエネルギーと経済の関係が本質的に変化したとみることもできる(仮説B)。 仮説Aは弾力性の安定性(通時的弾力性と共時的弾力性の一致)と一見矛盾しているようにみえるが、上記の通時的弾力性は一00年間の平均の弾力性であって実際はエネルギー消費と経済規模の関係は時間的に変化しているとみる方が妥当であろう。
世界各国で発表されている数十年間程度の長期のエネルギー需給展望における、エネルギー需要の対GDP弾力性は0・五前後のかなり低い値に抑えられていることが多い。 これらは石油危機を境にエネルギー需要の構造が変化したという前提に立っていると考えてよい。

また、多くの先進国についても、エネルギー/GDP比は経済発展とともに上昇し、経済発展がある水準に達すると減少するという傾向があるといわれる。 さらに、技術移転により後発国ほどエネルギー/GDPのピーク値が低下することを意味している。
もしこのこと(仮説C)が正しければ、発展途上国へのエネルギー技術の適切な移転により、早めにエネルギー消費を抑えることができる。 人類がそのようなことを成し遂げることが可能かどうかは、今後数十年間の各国政府の政策と国際的な協調にかかっている。
そのいわば第一段階として、一九九七年一二月の京都会議を受け、先進主要国は、一九九0年基準で二00八―一二年平均の炭酸ガス排出量をマイナス六―八%に抑えるという国際的公約が存在する。 ただし、この目標の達成は容易でないといわれる。
環境問題の多様性次に経済発展と環境負荷の関係について簡単に触れておこう。 経済発展はエネルギー消費とともに、環境負荷を増大させる。
その内容は、地球の温暖化、オゾン層破壊、砂漠化、熱帯雨林の減少、大気汚染、土壌汚染、水質汚染、ゴミ問題などさまざまであり、やがてそれは生物一般へ、そして生物の一つとしての人類へフィードバックし、健康被害や生存の問題と関わってくる。 環境負荷は、人類社会の出口の問題であり、入り口の問題であるエネルギーの場合とやや異なる特質がある。
第一に、各種環境負荷の技術的対策の難易度に多様性がある。 炭酸ガス排出の場合は、使用するエネルギー源の構成によって多少は変化するが、その回収は化学的性質上原理的に容易でない。
しかし他の環境問題の多くは一部を除けば、技術的には解決不能でない問題も多く、環境負荷をどれほど減少可能なのかは、環境意識、環境政策、環境コストの問題であるといえなくもない。 第二に、環境負荷の問題はその発生・影響のメカニズムが多様複雑である。
最近では、いわゆる環境ホルモンの問題のように、きわめて微量の化学物質が長期にわたる影響を与える場合もあることが少しずつあきらかになりつつある。 環境負荷問題の多様さは、さまざまな産業が生産しわれわれが消費する財貨・サービスの多様さによる。

エネルギー問題はある意味では相対的にシンプルであるといえよう。 これらの理由から環境問題を一つの問題としてとらえ、経済発展との関係を上記のエネルギーの場合のようにシンプルなシェーマで論ずることはむずかしいが、少なくとも多くの環境負荷は技術的には制御可能であると考えてよい。
ただし、政治的・社会的・経済的に制御可能とは限らない。 経済発展が不十分な国家の場合は所有する環境技術が少なく、また環境対策コストを支払う能力がない。
しかし一方では経済活動規模が小さければ環境負荷自体は原理的に小さい。 それゆえ、経済活動一単位当たりの環境負荷もエネルギーと同様に経済発展とともに増大し、経済発展がある水準に達すると、環境意識の高まり、環境技術の進歩、環境対策の導入により減少していくと考えてよい。
環境負荷が経済発展とともに、総量(経済規模×環境負荷原単位)としてどのように推移するかは個別に論じなければならないが、炭酸ガス問題など一部を除けば、環境負荷の低減はまったく不可能ということではない。 問題は環境影響は生物や人類へ蓄積的効果を有するので、どのような速度でその対策を講ずるか、である。
それを決定するのはわれわれの環境問題に関する知識と意識なのである。 長期的なエネルギー・環境負荷を低減していくためには、ライフスタイル、産業構造・産業技術、交通のあり方を検討する必要がある。
今後の長期的なエネルギー・環境負荷がどのようになるかは、基本的に人口の規模と家計のライフスタイルに依存する。 家計は財貨サービスの最終的な目的地であり、家計との相互作業はあるものの産業における取引きは中間投入にすぎない。
家計の行動がどのようにエネルギーや環境に影響を与えるかは、産業連関表や積み上げ計算などを利用して分析可能である。 特にエネルギー消費への影響については、ライフサイクルアセスメントの手法により分析されている。
もちろんこの数値はわが国全体のエネルギー消費に一致するものであり、このうち、家計での直接のエネルギー消費から波及するエネルギー負荷は、約一・八t/年程度で、残りの部分は家計で利用する設備や原材料を生産するために必要なエネルギーである。 そのおおまかな構成を表1・2に示した。
いちばん多いのはエネルギーや水道だが(間接投入も含む)、食生活が一二%、住宅が一三%、交通・通信が九%を占めており、教育などのサービス二一%もある。 ライフスタイルを変えることによりエネルギー負荷を減少させるには、たとえば、むだな包装の中止や家庭のエネルギー自体の消費を減少させることが必要だが、その実質的効果は意外にはっきりしない。
たとえば、空調用の電気代を節約しそのお金でドライブに行ったとしたら、かえってエネルギー消費は増大するかもしれない。 ではエネルギーや資源を節約し、文化的趣味にお金を使つたらどうであろうか。

あるいは住宅の耐周年数の改善にお金を回したらどうであろうか。 支出総額を減少することなく、エネルギー消費を削減するという計算は意外にむずかしいのである。
家庭用エネルギー消費と所得の相関に強力な関係が持続するかぎり、ライフスタイルが部分的に少し変化しても総量としてのエネルギー負荷があまり変化しないということも起こりうる。 環境負荷についても同様の可能性がある。
ライフスタイルの変化によりエネルギー・環境負荷を大幅に減らすには、間接的影響も考慮して、すべての消費支出構成の抜本的な変化が必要である。 それは文化の問題と関わってくる。


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